そんなお前が好きだった37

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 初めて井原が連れてきた響に興味津々で、ケーキやお菓子やコーヒーなどを持って井原の部屋に来て、響の頬の腫れを氷で冷やしたりと、かいがいしく世話を焼いてくれたのが結婚して北海道に行ったという井原の姉だった。
 結局一晩井原の家に厄介になったのだが、知らぬうちに井原の母親が響の家に連絡を入れてくれていて、携帯には祖父から、明日ちゃんと戻っておいで、とラインが入っていた。
 そんなこともあったな。
 井原の家で、響が散々、クソババアとこき下ろした祖母は、音大に進学した年の冬に亡くなった。
 響にとってはあまり可愛がってもらった記憶もなく、涙するような感慨もない祖母ではあったが、母親であり妻であった父親や祖父にとっては大事な存在だったのだろうと、今となっては思うこともある。
 響にとって祖父がとても大切な存在であったように。
要はガキだったんだろう、俺が。
 妙なことを思い出してしまった。
「まあ、祖父が離れに防音対策取ってくれたから、多少折り合い悪くてもゲンキンに実家にいるよ。おまけにちょっと増築なんかしたから、元を取るまではいないとな。晩飯の時間ずらしてるからほぼ顔を合わせることもないし」
「へえ……」
 続けて何か井原が言おうとしたのを遮るように、「この店も防音にしてるって?」と響は元気に話の矛先を向けた。
「ああそう。オヤジが亡くなって、俺が店をやることにした時、ライブとかやるのにやっぱ防音措置しとかないと右隣り近いし。結構な出費だったけど、母親がオヤジの保険ポンと出してくれたから、それこそ元取るまで見せやらないとな」
 元気は一人真面目な顔で頷く。
「そうか。俺んち、周り畑や雑木林だから、楽器鳴らしても周りは平気なんだけどさ、夜中にガンガンやったら、オヤジおふくろ姉貴が怒鳴り込んできた」
 井原がハハハと苦笑いする。
「バアカ、一番ヤバいだろ、それ。家ではヘッドホンでやれ」
 呆れた顔で元気はカップやソーサを拭いている。
「そうだ、週末、皆でライブやるんですよ。響さんももちろん参加しますよね?」
 隣から断定的な物言いで、井原が響を見つめた。
「え、いや………」
 
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